転んだ、だが、
野田選手はあきらめなかった。足の痛みをこらえて、レースを続ける。右ひざもひねり、棄権することもできたが、必死に約10メートルを上り、再スタートした。
再びコースから外れかけたが、なんとかゴールまで滑り降りた。日本の大会ではしばしば見かける光景(こうけい)だが、五輪にかける日本選手が勝負を捨てない姿と米国の大観衆(かんしゅう)の心を打った。
野田選手は、途中で投げ出せば、成績も何も残らない、それに応援してくれた人に申し訳ないと思った。最後まですべり終え、ゴールした野田選手を、大観衆の割れるような大きな拍手が迎えた。
外国の新聞社も、野田選手の行動を、
「金メダルだけが偉大な瞬間(しゅんかん)ではない」
とたたえ、世界に紹介(しょうかい)した。
レース後のインタビュー
「五輪は温かい感じがする。今回は失敗したこともあるし、もう一度出られるものなら出たい」
と、野田選手は笑顔で答えていた。